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● スラム アンド ショーダウン ●

- デザイナーズノート -

 今回も、制作後のデザイナーズノートをお送りします。トリックテイキングを扱うため、専門用語も入ってきます。

●制作のきっかけ

 今回は時間が比較的あるので、小箱で少し手の込んだカードゲームをと思っていました。春のゲームマーケット開始前からネタはある程度絞り込んで、ゲームになるかどうかを見てみようという感じでした。

●アイデア出しと参考にした作品

 今回のネタ出しは 2024春の作業が完了した 3/21 からスタートしていました。6/28 までかけてネタをまとめていたようでした。計算をしたり、ゲームになるかどうかをチェックしたりの作業が中心でした。

 ゲームマーケットではトリックテイキングとゴーアウト系が大人気で、トリックテイキングと何かを組み合わせるというものもおおかったのですが、ポーカーとの両立はネタがありそうでなかったので、早めに作っておこうというのがきっかけでした。

 アイデアの元は「Balatro」が一番要素としては濃いでしょうか。デッキ構築ポーカーゲームです。最初は少しだけデッキ構築要素を入れていました。

 2つのゲームを組み合わせて両立させる点では、「ぷよぷよテトリス」も意識していました。前回のボツになった方の紙ペンゲームでもそのあたりの要素を気にしていたのですが、こちらで拾った感じです。

 ドローポーカー側は、ビデオポーカーのプログレッシブやジャックポットの要素を拾っています。セブンカードドローポーカーもなくはないという感じです。

 トリックテイキング側は、プレイントリックテイキングをベースにしています。マストフォロー、切り札あり、特殊カードありなので、少し「ナポレオン」に近いかもしれません。手役を作るトリックテイキングゲームは「命中/地下迷宮と5つの部族」もあります。ビッディングはありませんが、トリック数を調整する方向にしました。

●テストプレイ

 6/15 にお披露目プレイした感じは、要素を詰め込みすぎた感があったので、思い切って減らす方向に舵を切りました。デッキ構築要素をなくし、切り札固定にし、今の要素に近い感じにしています。

 それぞれの要素の持ち味を出すため、余計なルールはできる限り入れずに、特殊カードで調整という方針にしました。

 特殊カードは、当初よりも弱体化しています。ワイルドスートは元からリードスートに化けるカードなので弱点はありましたが、スーパートランプの切り札請求がなくなり、ワイルドカードのスーパートランプ請求もなくなりました。これにより、スラムやグランドスラムが取りにくい調整になっています。

 あとから入ったのは、ワイルドカードの5で「麻雀」の赤牌から拾っています。ランクが1~9だとストレートで確実に「5」が入るのも計算して入れています。

 手役は、不成立のパターンが多くなりそうだったので、3枚ストレートと4枚ストレートの役を入れていました。実際にプレイしてみると、ストレート以上の5枚役がそれなりに成立することが分かりました。追加の役はすべてなくし、通常のポーカーハンド+ファイブカードのみにまとまりました。

 終盤は、得点バランスの調整が中心でした。0~3トリックの得点はすべてのパターンを洗い出して、計算のうえで得点をつけています。ボーナスは、最後まで調整が入り、トリックテイキングに絡むのをすべてなくし、手札を整えるパターンにしています。

 逆転要素は、最終ラウンドのみ得点2倍を入れていましたが、早めに撤廃し、その代わりに、フォーカード以上と、4トリック以上はラウンド依存で得点が伸びるプログレッシブを採用しました。役の得点とプログレッシブボーナスは最後まで調整が入っています。一発勝利のジャックポットは最初から入れていました。

●タイトルとパッケージアート

 タイトルとパッケージアートには AIを活用しています。タイトルは ChatGPTで、ゲームの要素と特徴をインプットにブレインストーミングをしてもらいました。ポーカー側で Showdown が出てきたので、対応するトリックテイキング側は Slam にしました。

 パッケージアートはビデオポーカーに少し寄せた感じにしました。イメージカラーは ChatGPTで候補を出してもらいました。今回は画像を入力できるようになったので、かなり作業が楽になり、ゴールドがテーマカラーになりました。

 スートのモチーフと色も生成してもらいましたが、一部は入れ替えています。アイコンは生成ではなく素材から作成しています。

●マニュアルと用語

 今回は、マニュアル自体は分量は多めになりましたが、そこまで難しくはない感じでした。ソロプレイ部分が丸々追加になるのがいちばん大きい部分かもしれません。

 用語は、少し丁寧に(冗長に)定義しています。タイトルの元となる「スラム」と「ショーダウン」は入れる必要があったので、入れ込みました。トリックテイキング周りの用語で、リードスートとマストフォローも少し丁寧に定義しています。

 スート周りも少し説明は多めです。基本スート、通常スート、切り札、超切り札、ワイルドスートと重複する要素があります。

 ルール説明で、複雑な部分はワイルドスート周りです。ゲームバランスの関係で、フォロー時はリードスートに化けるので、場合分けが少し多くなっています。リード時は基本的に切り札請求で選択し、フォロー時はマストフォローの制約を受けない点が重要になるでしょう。

 今回もマニュアルに 3週間かけています。下書きを作り、機械校正と ChatGPT 4、Claude 3.5 を併用し、オールグリーン法の推敲もしています。PDFを入力できるので少し楽になりましたが、精度はそこまで高くないです。

 特殊カードの説明をどこに入れるかが難しく、LLMではコンポーネントのところに入れた方がよいとのコメントがありました。コンポーネントの説明でゲームの内容を記載すると、読み進めるときに後戻りが発生するので、使用するところに入れ込んでいます。

●Tips

 恒例の Tips ですが、ドローポーカーとトリックテイキングのテクニックは流用可能です。

 ドローポーカー部分はペア系を残すことと、ボーナス条件、切り札、ランクの高いカードは需要が高いので、引く確率が下がる点に気をつけた方がよいです。テストプレイではストレートフラッシュを複数回見たことがあります。

 ペア系の役は、基本的にトリックがとりにくい手札になります。切り札のフラッシュは、トリックと両立できますが、スーパートランプと両立しないので、最大4トリックになることが多いです。不要なカードとして、ワイルドの10やスーパートランプを処分することで、情報を明かさずに切り札の9をエスタブリッシュできたりします。

 トリックテイキングは、スラム以上を狙うか、適切なトリック数を取るかになってくるかと思います。スーパートランプは確定で1トリックですが、2~3番目に強い、ワイルドの10、切り札の9は若干不安定です。

 トリックを取る方向は、基本的にトリックテイキングのテクニックがそのまま使えます。切り札狩りが有効ですが、スーパートランプの存在に注意が必要です。

 逆にトリックを取らないテクニックも必要になる場面もあります。フォローできないときに、意図的にランクの高いカードから処分するのが基本テクニックです。応用編として、ワイルドの10は通常スートがリードされて、切り札が出されたときに処分できます。切り札の9はスーパートランプが出たときに処分できます。

 人数依存性はそれなりにあります。人数が多ければ多いほど、強い役が作りにくく、スラムもできにくいので、相対的に得られる得点が減り、得点量が人数依存しないボーナスや、ワイルドの5の2点が強くなります。

 トリックテイキングは、カードの出し方で若干関与できるので、得点は安定しませんが、その分スラム以上の得点効率を高めに設定しています。特に終盤はスラム以上を取らせない打ち回しが必要になる場面もあります。

 ソロプレイは、目標得点をどのように達成するかがポイントになってきます。最初の 4点はストレート以上の役があればカバーできますし、10点はスラム以上が取れればカバーできます。トリック数は水物ではありますが、序盤にスラム以上がとれると大きくデッキを強化できるので狙う価値はあります。自分の切り札が4枚で、ダミーからも切り札が4枚が出たパターンもありますが。


 今回も、デザイナーズノートをお送りしました。トリックテイキング経験者に向けた作品ではありますが、気になった方は手に取っていただければと思います。