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今回も、制作後のデザイナーズノートをお送りします。
前作、前々作と負荷が大きめなゲームが続いたので、負荷が軽めのゲームをと思っていたのですが、ここ最近のトレンドとして、ゴーアウト系/大富豪系のゲームもあり、前々から蓄えていたネタが形になったので出すことにしました。
今回は、ゲームマーケット2024秋の翌週 11/24 にはアイデアをまとめ始めていたようです。11/30 にはネタがまとまったようです。
ゴーアウト系のゲームは、2012秋の「アニマル トレイル」以来なので 12年少しぶりでしょうか。今回もスートなしランクのみにしていますが、カード構成は少し平たくなっています。カード枚数は少し少なめの 48枚にしようと決めていました。
OKAZU brand の「金魚の商人」のテストプレイで、ゴーアウト熱が上がってきました。ベースのアイデアは、カワサキファクトリーの「アニマーレ タッティカ」と、ぽんこつファームの「アンリミテッド富豪」のオマージュがあります。
「アニマーレ タッティカ」は「合計数が同じでより枚数が多い」カードを出せるギミックがありますが、逆方向のアプローチもできるのではということで、「合計数が同じで枚数が異なる」カードの出し方ができるようにしました。
大富豪系は、手数理論があり、カードがバラバラだと単純に損することもあり、カードの数値を調整するギミックをつけました。こちらは「アンリミテッド富豪」のオマージュでもあります。
ゲームマーケット2024春の「ナンバーフォージ ファクトリー」で、数字を操作する系のゲームは出しましたが、今回もその要素を少しつけています。合成数と比率、ちょっとした足し算の要素があります。
テストプレイ中盤から終盤で特殊効果を追加しましたが、ほかのゲームでまれに見られる「6」を「9」にする能力は、どこかで使いたかったので、入れ込みました。どちらもちょうど扱いやすい数値ではありますし。一部の能力は「大富豪」のローカルルールも参考にしています。
テストプレイ期間は 12/1 ~ 2/8ですが、年末年始を挟み、1月はゲーム会が少し少なくなるので、かなり短時間でまとまりました。
お披露目は、12/1 で、カードの数値幅が 2~24と広く、2と3は付け札でのプラスマイナス、4は付け札でのプラスができる能力がついていました。あとはオールマイティのプラスマイナス1/Xがありました。
調整の過程で、ランクの上限を 18までにして、付け札も+1~3 にして全員に配ったりしましたし、4~6、5~7 など範囲指定ができるカードもありました。付け札は全員に配るならチップ制に使用ということで、ここでパワーチップの要素が出てきました。
年末のテストプレイで要素を盛り込んで、複雑になりすぎました。計算量の限界を迎えそうな感じになったので、正月休みを挟んでシンプルにしました。これで一気に現在の形に近づいています。特殊能力もほぼ当初案ですが、「10」のカードだけちょうどいいアイデアをいただきました。1/11 のテストプレイで方向性が固まった感じです。
年末年始は回数を重ねて、調整を繰り返していましたが、方向性が固まった後は UIのチェックなどが中心になりました。
タイトルは、ChatGPTにアイデアを出してもらいましたが、最終的にランクを超える出し方と、両替するという意味で 2つの出し方を表現した「Exceed Exchange」が思いつき、自然な英語になるように and でつなげました。結果として、2024秋の「スラム アンド ショーダウン」に近い形に落ち着きました。
パッケージアートは、ChatGPTにゲームの情報を一切与えずに、タイトルだけの情報で、風景画のプロンプトを出力して、Stable Diffusion で生成しています。このあたりは、回数勝負な部分もあります。
イメージカラーも候補を生成してもらい、ライムグリーンになり、マニュアルなどの色のカラーパレットも作ってもらいました。カードも含めて、カラーパレット作りはだいぶ省力化できています。
今回は、マニュアルの分量はそれほど多くならないだろうと思っていて、その通りになりました。大富豪系のゲームは1回書いていることもあるのと、流れが明確なのでそこまで困る部分はありませんでした。
用語ですが、パワーチップの獲得の兼ね合いで、「最後にカードを出したプレイヤー」を定義する必要があり、上がりでの親流れの兼ね合いで「最初にカードを出すプレイヤー」を別に定義する必要がありました。
タイトルの都合で、カードの出し方で「エクシード」と「エクスチェンジ」を定義しましたが、半分はフレーバーで、補足説明を入れています。
追加した要素が複雑になりがちですが、パワーチップ周りでレアケースが発生しやすく、説明を厚めにしています。
コンポーネントの都合もあり、パワーチップは有限としており、不足した場合は誰も獲得できないことにしていますが、細かいケースでタイミングを問われたときに対応できるようにしました。通常は、「場が流れたタイミング」で使用したチップはストックに戻り、そのあとにチップの獲得がある、と覚えておけば十分です。
上がりのときに、パワーチップや特殊効果で意地悪ができる作りになっていますが、順番操作ができないように、処理が一意になるよう細かいルールを入れています。通常は、上がるのに必要最低限しか能力/チップの使用ができないと覚えておけば十分です。
上がりルールはテストプレイのときも、マニュアルを書いている段階でも、いろいろなケースがあり、苦労しました。
テストプレイでは、最後の手札が「9」が 2枚のときに、「9」のカードは「6」として使用できる能力があり、「6の2枚組」にできるのかが問題になりました(できないルールにしています)。
余談ですが、この場合「18の1枚組」か、「10以上の2枚組」かどちらかの出し方ができ、順位に関わる駆け引きが生まれました。前者は「16」や「18」にパワーチップをつけると返されますし、後者はより高い2枚組で返されます。
恒例の Tips ですが、大富豪系のゲームなので、何手で上がれるかの組数の考え方が通用します。孤立したカードの1枚組はかなり弱いです。シンプルですが「18」「16」の強いカードなど、キーとなるカードのカウンティングも有効です。最終形を意識することも重要ですし、枚数が足りなければ出されない点も重要です。
このゲームの独自要素として、エクスチェンジの受け入れがあるので、よくある返し方、返され方は考慮に入れておきましょう。7の2枚組と14の1枚組、9の2枚組/6の3枚組と18の1枚組、15の2枚組と10の3枚組、18の2枚組と12の3枚組と9の4枚組などがあります。弱いカードの処理や、孤立したカードの処理、カード枚数の誘導などに使えます。
パスによるパワーチップの獲得は、中盤まではバラバラの数字の処理にも使えます。3までの差は埋められることを覚えておくといいでしょう。終盤になると、全員がパワーチップで武装しているのと、手札の枚数以上にはならないので、無駄にするくらいならつ買ったほうがいいケースもあります。
パワーチップを活用した例としては、16+3の19で、18のカード+パワーチップを強制させます。また、18+3 の 21 は最高ランクですが、7の3枚組に返される難点があり、あえて 18+1 の 19 に調整する手もあります。2枚組に自信があれば 20 も選択肢に入ります。
特殊カードとの組み合わせでは、7の3枚組+パワーチップ3枚で 21 や、12, 15, 18の2枚組に対応できます。8 は特に序盤の主導権に利いてきます。9 はパワーチップも組み合わせると 6~12 に対応できる幅広さがあります。10 はエクスチェンジを封じ、枚数を固定する強いカードですが、自分にも影響するのに注意です。枚数があれば 15の2枚組、15の4枚組、偶数の5枚組が返せます。
おまけですが、あまりにも計算量が大きくなったので、ボツにしたルールがあります。最終版には、範囲指定のカードが入っていないので、まだましではありますが、エクスチェンジをより誘発するルールです。
このゲームのランクは正の整数をとりますが、パワーチップの効果を 0~3(7のカードに対しては 0~7)を加算する効果に変更し、有理数に拡張します。ただし、合計ランクは整数にする必要があります。これにより「合計ランク23の2枚組」のような表現になります。
例えば、9の3枚組(合計ランク27)に対して、12の2枚組にパワーチップ2枚を使用し、それぞれ 1.5 を加算し、13.5 の 2枚組で「合計ランク27の2枚組」としてエクスチェンジできます。
スタートプレイヤーが最初に出すカードにも、このルールを適用可能です。エクスチェンジのされやすさは変わらないので、中途半端なランクで始める意味は少なさそうですが。
今回も、デザイナーズノートをお送りしました。ちょっと癖のあるカードの出し方ができるゲームではありますが、このカードに対して、こんな返し方ができるといった発見と、最終形でどのカードを残すかの駆け引きを楽しんでいただければと思います。