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恒例の制作後デザイナーズノートです。ゲームのアイデアなどをまとめていきます。
前作、前々作はトリックテイキング、ゴーアウトとトレンドに乗るゲームが続いたので、これまでやってこなかったジャンルの作品をと思っていました。
当時「ギャングポーカー」(ザ ギャング)をよくプレイしていたこともあり、協力型ゲームで、あまり見られないようなコミュニケーションの取り方を模索していたところでした。
アイデアだしのファイルを見る限り 6月末くらいにアイデアをまとめ始めています。7月中旬くらいにネタがまとまったようです。
大元は「ギャングポーカー」でテキサスホールデムのハンドで意思疎通をする点から、ほかのゲームの要素で意思疎通ができないかというところから来ています。以前プレイした「クズーカ」がビッドで意思疎通をするゲームだったことと、トリックテイキングブームの中でビッディングをするゲームはあまり見ないことから、この要素を拾うことに。
ネタのストックとして、文明発展のテーマがあったので、そちらで掘り下げることにしました。「世界の七不思議」のイメージですが、「ヒストリーオブザワールド」のような時代の流れも少し意識できればという感じです。最終的にはふんわりとしたイメージを残した感じです。
21年目ですが、協力型ゲームを作るのは初めてでしたが、プレイヤーに「競りで意思疎通ができるか」を問う形にしました。
テストプレイ期間は 7/26 ~ 9/15 でした。お盆休みにゲーム会を入れたぶんで 8月最終週にはバランス調整が完了しましたが。UIの調整にも時間を掛けることにしました。
初期段階は 5ラウンドと長かったのと、少しデッキ構築要素を入れていたのですが、時間が長すぎるので 3ラウンドに縮めて、ビッドテーブル上に特殊効果をつける形にしました。要素が少し多かったので、まずは、根本の部分を先に作ることに。
全体の手札が分かりすぎても、分からなさすぎても問題があるので、ちょうどよいバランスをつかむのに苦労しました。「公示」の要素を入れたのもこのあたりでしょうか。種類と枚数のみ限定的な要素の出し方は「プラネットX」あたりから来ています。
今度は難度が簡単になりすぎたので、精度を要求することにしました。このあたりで、論理パズル的な要素を入れ始めています。文明発展のテーマは初期段階から入れていたので、入れたかった学問の要素をここで入れ込みました。テーマから方向性がついた感じです。
ボーナスアクションも、ビッドが特定の値に達したときに発生として、かなりすっきりした感じになりました。
なお、各カードの名称と学問カードの名称とざっくりとした効果は ChatGPTでのアイデア出しをかなり使っています。ブレインストーミング的な感じをしたり、効果から名称を出してもらったりをしています。
万能を全生産力に追加して難度を上げ、上級ルール、最上級ルールを作りました。カード枚数もこの時点で固定したので、学問の数を調整したりとか。
最終的に、テストプレイの練度も出たので最上級でもそれなりの精度でクリアできるバランスになりました。最終的に「競りで意思疎通はできる」ところまでは作れたかと思います。
今回も、タイトルは ChatGPTにアイデアのもとを出してもらいました。協力型ゲームとわかる要素を出してもらったりとか。
共通認識から「common」を拾い、そこから広げて、団結を示す「unity」をつなげました。英語で早めに発音すると community (共同体) に聞こえる言葉遊びも入れています。
パッケージアートだけでなく、全体的なイメージは、Stable Diffusion と ChatGPT をかなり活用しました。油絵調で文明発展がテーマと比較的スタンダードなところなので、生成しやすいテーマでした。
今回は、世界観から先に作ったのと、生成しやすい画像で、カード自体に載せる情報もそこまで多くないので、大胆に全面イラストのデザインを採用しました。あくまでもカードゲームではあるので、視認性をある程度保ちつつという感じにしましたが、TCG寄りの、しっかり縁取りや枠を作るUIで作り続けていたので、ここも初めての試みでした。
基本的に Stable Diffusion が得意なテーマではありますが、大人数を描きたがるわりに、書き込むものが多いと不自然な感じになってしまうので、そのあたりを調整するのが難しいところでした。出力してうまくいかなかったものは、プロンプトから人物の数を減らしたりと調整しています。
生成で難しかったのは、背景/船/魚/人物のサイズ感が合わせにくかった「漁法」、なぜか畑から直接トマトの実がなる「大農園」、大砲の後ろからマズルフラッシュが出てくる「火薬」、問答している2人の人物が不自然になりやすい「哲学」、モチーフが抽象的すぎる「論理学」、絵画と人物のバランスが取りにくい「芸術学」などでした。
今回から DTPソフトを Affinity に乗り換えていますが、制作作業時は無償化前でした。
マニュアルの下書き自体は、そこまで時間はかかりませんでした。学問カードの効果を入れ忘れていたので追加を入れましたが。アクション自体は複雑ではなかったのが主な要因です。
用語も ChatGPTの校正で統一した部分があります。「ビッド値」が該当します。校正はいままでよりも ChatGPTを多く使った感じです。客観的に読んでもらうのには適していますが、用語の統一などはうまく動かないところもあります。
ここ最近は、コンポーネントと用語を抜けなく定義するチェックを強化しています。定義と説明の場所は毎回悩ましいところです。基本的に早い段階で定義するのですが、ゲーム用語に限っては、定義と使う部分が離れすぎないようにしています。
今回も恒例の Tips をこちらで書きます。コミュニケーション系のゲームなので、限られた情報をいかにうまく使うかを意識してみてください。ゲーム的には、メタ要素での判断はしないことが原則になりますが。
カードごとに情報量の差があります。生産力が高いカードは、ビッドの精度に与える影響が大きく、情報量が多くなりますし、全分野の生産力に影響する「万能」のカードも情報量が大きいです。
「公示」は、全員の情報を開示する大きな手段です。情報量の大きいカードの存在を示すのが基本だと思います。基本は枚数が多い分野を示すことになりますが、高い生産力のカードが固まっている場合には、生産力で開示するのも手です。0枚 = 持っていないも、ヒントになるケースがあります。手札全体の情報量が低いときに、情報力がないことを暗示することが可能です。
競りは、誰がどのボーナスを取るかが重要です。この部分だけ相談が可能ですし、開示することで得られる情報が大きくなるようにコントロールしてみてください。自明な情報を公開しても情報量は増えません。
分野と生産力は、自分の持っているカードをそれとなく伝える役割があります。序盤は公示できなかった分野のカードの存在をアピールできますし、終盤の数値調整では、自分目線でどのくらいの生産力がありそうかを示すことができます。
2つのキューブのどちらを動かすかは、どの選択肢を残すかに関わってきます。先行しているキューブを動かすと、選択肢のキープできます。ほしいボーナスがある場合はそちらを動かすのも手です。ボーナスに気を取られて、ビッドしすぎないように注意してください。
学問は、場面により得られる情報量が異なります。公示と組み合わせると、大きな情報が得られる場合もあります。選ばれなかった学問は次のラウンドに残るので、後のラウンドの方が有用ものは残す手もあります。
公開ボーナスは、基本的に情報量優先がいいでしょうか。万能のカードの位置、生産力が大きいカード、ほかの情報を確定させるカードが有効です。上級ルール以上では、非公開カードを取りこぼすと、未確定の情報ができてしまいます。
公知の情報も重要です。配られたカード枚数、手札枚数、カード構成は公開情報です。2のカードは各分野に 2枚なので、残りのカードが 1 であることが分かったり、1枚のカードは生産力1以上あるのも自明な情報です。各分野のカード枚数も決まっているので、枚数のヒントだけで生産力の範囲が分かるケースもあります。
上級ルール以上では、「捨てる情報」も必要になります。3つすべての分野について、精度の高い予測するには手数が足りなくなるので、どの分野を捨てていくかをそれとなく固定するといいでしょう。進める分野についての相談はできません。
得点的には、不足で失敗するより、少し超過して失点した方がいいので、踏み込みすぎには気をつけましょう。2ラウンド目以降の、生産力が 3以上のカードの特定が必要になってきます。
今回もデザイナーズノートをお送りしました。初めての試みを色々と入れていますが、プレイヤーの創意工夫で「競りで意思疎通ができるか」の問いへ答えてみてはいかがでしょうか。